第四話 逆さまの都
翌日、真白は記録を調べた。 先の斎王たちが何人いて、どれぐらいの期間、つとめを果たしたのか、知りたくなった。 「こちらにお持ちしました」 次々と、照葉が櫃を運び入れる。たちまち、真白は書物に囲まれた。 「ありがとう。重かったでしょう」 過去の記録に目を通す。斎王のはじまりははっきりしないが、壬申の乱以降に確立したらしい。 「今ごろ、どうなさったのですか。斎王について知りたいとは」 じっと照葉が見つめてくるので、なんとなく気まずくて目を逸らしてしまった。 「斎宮に来て、七年だもの。来月には月次祭も控えています。よりよいお祈りができるよう、もっと学んでおきたくて」 半分ほんとうで、半分は嘘。しかし、照葉は頬を緩めてくれた。 「それは、素晴らしいお心がけです。私も、張り切ってお手伝いいたしますね」 張り切る照葉の顔を直視できない。そのまま視線を記録に移した。 よく眠れなかったせいか、紙の上の文字がぼやける。まばたきを繰り返し、こらえる。指で文字を追って拾う。 歴代斎王の……斎宮に留まった期間は、まちまちだった。 二年。 そのあとに十七年、という大きな数が目に入ってきて指が止まった。七年は長いのではと思いはじめていたのにそうでもないらしい。 十七年に驚いたが、それで終わらなかった。 醍醐帝の御世では柔子内親王が三十四年、斎王を務めたという記録があった。 思わず、息を止めた。 真白が選ばれる三代前のことで、昔話ではない。醍醐帝の世が長く続いたためであり、本来は寿ぐべきだろうが、真白にはできなかった。 しかもこの柔子内親王、『よしこ』と読むらしい。真白の本名、徽子と同じ音。共通点を見つけてしまって、全身に震えが走った。 記録を床に置いて目を閉じる。庭の木々が風を受け、葉擦れの音を立てていた。
三年。
五年。風景-rotated.jpg)
この記事へのコメントはありません。