第四話 逆さまの都
探っても、答えは出なかった。それどころか、かえって心の闇が深くなってしまった。 斎王を閉じ込めるかのような、逆さまの都。 決まっていない在任期間。 この身、斎王はいったいなんのためにあるのだろうか。 今日ばかりは琴を弾く気も起きず、ぼんやりとその隣に寝転んでしまう。 「そうしていると、真白さまらしくありませんね」 照葉がおかしそうに笑ったが、真白はちっともおもしろくない。 「私らしいって、なに。中途半端で、闕けた斎王なのに」 「それが、かえって良かったのではありませんか。ここは『逆さまの都』ですもの」 「どういうこと? 闕けていて、良かったとは」 話の続きが聞きたくて、起き上がって照葉のそばまで這い寄った。照葉は真白の髪の乱れを直してくれた。 「完全、完璧な斎王さまだったら、七年も無事におつとめできなかったかもしれません。闕けているぐらいで、ちょうど良かったんですよ、きっと!」 「そんな簡単な考え方でいいの?」 戸惑ってしまい、照葉の顔色を窺う。しかし、強く頷き返されてしまった。自信に満ちている。 「もちろんです。斎宮寮では、真白さまを讃える声が大きい。それが証です」 なにやら、鼻息まで荒くなっている。 「では、斎宮から伊勢神宮が遠いのは?」 「ですからそれも、逆さまなのです。斎宮から見たら遠いかもしれませんが、都から見たら近いです」 「あ、それは確かに」 なるほど、と真白も頷いた。 「ご一緒に、記録を読ませていただきましたが、斎宮が今よりももっと伊勢神宮に近い時代があったようですね。でも、火災が起きたとかで戻ってきています」 「その記録なら、私も読みました。近すぎて、障りがあったのかしら」 「かもしれません」 「斎宮の地は、ひらけていて、街道沿いで、大勢が住むのに便利ですものね」 「はい、その通りです。やはり斎宮は、斎宮に。意味があるのでしょうね」 「では、そもそも斎王とはなにか……だけど」 真白が次の話に移ろうとしたとき、几帳の陰から乳母があらわれた。 「お話に熱が入るのはよろしいですが、斎宮寮より急ぎの知らせが入りました」 「急ぎ、とは」 あまり例がないので、真白は背筋を伸ばして乳母のことばを待った。 「伊勢神宮よりお使いがあったようです」 臨時の祈りを捧げてほしいとの要請だった。急いで準備を整えなければならない。 斎王については気になるけれど、踏み込んだ話はそのまま途切れてしまった。
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