月刊傍流堂

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第四話 逆さまの都

 年が明けた。天慶八(945)年。

 真白は十七歳になった。

 髪も背丈も伸びたのに、都の父母からはなんの知らせもない。

 文通を断ったのは真白だったが十七での童形は、さすがに恥ずかしい。今年じゅうには、きっと。父母を信じて待っている。

 その日も真白は乳母や照葉と静かに過ごしていた。少し風の強い、寒い日だったが、穏やかだった。

 いつものように琴を弾き、歌を学ぶ。

 なにも変わらない日――だったはずなのに、斎宮寮の前では荒々しい馬の足音が響いた。しかも、何頭もいるらしい。続いて官人たちの騒がしい声。ざわめきが広がる。

「なにごとでしょう。様子を見て参りますね」

 すぐさま、乳母が立ち上がった。照葉も、一緒に行って確かめたいような素振りをしたが、真白をひとりにはできない。

 斎宮は突然、緊迫した雰囲気に包まれた。

「これは……急使、でしょうか」

 照葉は几帳の隙間から斎宮寮のほうを窺っている。

 そのとき、触れてもいないのに部屋の隅に置かれていた屏風がばたりと倒れた。

「まあ、どうして。風も吹き込んでいないのに、あんなに重たいものが」

 ふたりは倒れた屏風を見つめた。あれに巻き込まれていたら、けがをしたかもしれない。

「怖い思いをさせてしまい、すみません。先ほど私、掃除をしたときに少し動かしたので、もとの位置からずれてしまったのかもしれません。今度はしっかり直しますね」

 都の四季が描かれている四面の屏風。父と母が真白のために選んでくれた調度品のひとつだった。さみしくなったときはこれを眺めて心を慰めている。

 照葉が起こすと、屏風の秋の面に亀裂が入っていた。いちばん気に入っている絵だったので、真白はどきりとした。

「申し訳ありません! このような」

「いいえ、照葉のせいではありません。倒れる前からひびがあったのでしょう。けがをしないように気をつけて。いいえ、それよりも……」

 がたがたと、真白は震えはじめた。

 なぜか止まらない。照葉に向かって手を伸ばす。自分の体なのに、言うことをきかなかった。

「どうなされました、真白さま」

 小刻みに震えていると、照葉が抱き締めてくれた。真白は照葉の袖で顔を隠す。頭が痛い。

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