第五話 白き玉と母の願い
「なりません。渡せません。中に、母さまの書きつけらしきものが」 まだ、どきどきしている。不意に飛び込んできた母の字が、真白の心を揺らした。 息を吸い、細く長く吐く。 あらためて、箱を開けた真白は色褪せた書きつけを手にする。 『いつも真白が、穏やかに健やかに、過ごせますように』 そこには、短いながらも母の願いが込められていた。書きつけの下からは、綿でくるまれた丸い白玉が出てきた。 そっと、指でつまみ、取り上げてみる。 「伊勢の海で、稀に貝の中に眠っている玉だそうです」 乳母が教えてくれた。 「とても白くて、丸いですね」 「まるで、真白さまのようではありませんか」 白玉は、静かな光を放っている。まじりけのない、白い……真っ白な玉。 『真白』 じっと見つめていると、母の声が聞こえたような気がした。
長櫃を開けると、見慣れない白木の箱が出てきた。手のひらにのるほどの大きさだ。
「これは?」
そっと持ち上げると、軽かった。左右に振ってみると、なにか小さな硬いものが入っているようで、カタカタと鳴った。しかし、思い出せない。
「これは、斎王に卜定されたころ、伊勢より真白さま宛てに届いたお品ですよ。真白さまのお守りとして、寛子さまが荷の奥に忍ばせました」
「母さまが」
まったく知らなかった。真白は両手で大切に包むように持ち直した。
「はい。都へ帰ることが決まりましたし、開いてみてはいかが」
ふたを開けてみようと試す。きゅっと閉まっていた木箱に抵抗を感じたが、やがて開いた。
だが、予期せぬものが目に入ってきたので、慌てた真白は再びふたをした。
「どうしたのですか、真白さま。中身が気になりますよ?」
箱を開けようと、照葉が横から手を伸ばしてきたので、思わず頭の上に箱を置く。
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