月刊傍流堂

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第四話 逆さまの都

「こちらに、ものを置くのはいけませんよ」

 乳母の少し厳しい声が聞こえてきた。

 新しく入った下仕えの女房が、運んできた箱を抱え直している。女房はひたすら謝った。

「覚えておきなさい。この方角はよろしくありません」

 なぜか、までは説明されないが、なにかを察したように女房は頭を下げた。

「今夜は月見の会がありますからね、それまでに片づけないと。ああ忙しい」

 そのやり取りを聞きながら、真白は読みかけの書を置く。乳母が咎めたのは、箱を置いた場所が都の方角だったからだ。

 斎宮へ向かう日に、聞かされたことばが蘇る。

――『都の方(かた)に、面向(おもむ)き給ふな』

――斎王よ、都を振り返るな。帰ってくるな。

 だから、斎宮ではその方角を避ける。はじめは慣れなかったけれど、今では身に沁みついていた。

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