第3話 つきよよし
とりあえずの、照葉の最初の五部が人気を得た。 ここ数日の斎宮寮は、『竹とり』の話でもちきりだった。物語は今どこにあるのか、次に誰が読むのか、騒がしい。 仕掛け役の真白は上機嫌。女官たちは真白の提案通り、それぞれが思い描いた物語の種を書き留めた。 素焼きの器の欠片が真白の前に並べられる。部屋中、一面に。足の踏み場もない。 「土器の欠片が、こんなにたくさん」 欠片の表面に、字や絵が墨書きされていた。すべて、物語の感想や、思いついたことだという。 物語の『芽』が出た。 「紙は高価ですからね。このあたりの地元では、欠けたり、割れたりしたかわらけ(土器)を使って、手習いや文の下書きをするそうです」 「気安く使えないのね、紙は。書写用の紙も渡すべきでした。このままでは、『竹とり』が写せない」 「ご心配なく。今回の順さまからの贈りものの中に、紙も入っていました。おそらくですが、紙の贈り主は重明さまではないかと。東三条邸で見かけた紙も入っていましたので」 「まあ、父さまが」 自分は忘れられていなかった。真白は白い袖先を握り締めた。 「でしたら、順おじさまに送るお文の中で、父さまにもお礼を述べていいかしら」 「普通に、重明さま宛てのお文を書いたらよろしいのに」 「私からいらないと言ったのに、それはできません」 「真白さまったら。『竹とり』が人気を博したのは、物語そのものだけではありません。真白さまのお人柄ですよ。斎王としてご立派になられたのに、頑なですね」 「そこが真白さまのいいところです。それよりも、部屋をこんなに散らかして」 照葉の母……真白の乳母が室内に入ろうとしたが、前に進めないので戸の前で困っている。 「欠片は動かせません。急ぎの用事でなければ、あとでお願い」 すぐに真白は乳母の足を止めさせた。 「ふう、仕方ありませんね。お祈りの時間までには、片づけてください」 「それはもちろん。私は斎王ですもの。さあ照葉、かわらけに書いてあることを読んで教えて」 「はい、真白さま」 照葉が手近の欠片を取り上げたところで、母が再び声をかける。 「恐れ入りますが、内院の前庭に女官たちがたくさん集まってきております。真白さまに、どうしてもお話があるそうで」
この記事へのコメントはありません。