第3話 つきよよし
その夜、真白は月を見上げた。 斎宮の空を渡る月は都と同じ月のはずなのに、少し近く、大きく見えるような気がする。 あの物語を読んだせいだろうか。 ――『竹とり』。 月に都があるなんて、信じられない。心を失ってまで、帰りたかったのだろうか。 物語を思い、琴をかき鳴らす。 夜空に琴の音色が広がって、しだいに消えてゆく。 物語の中で、かぐや姫は『罪を作って地上に堕とされた』と語っている。そう、月は満ち欠けを繰り返す。かぐや姫は『闕けた姫』。 「額に傷持つ、『闕けた斎王』」 この物語をまとめた順が、真白の傷を知っているとは思えない。偶然だ。頭を横に振って否定する。 裳着も済んでいない自分は、かぐや姫と似ていない。 斎宮は都を模しているけれど、都ではない。 「私は、竹から生まれていない。父さまと母さまがいるもの。求婚もされていない」 琴の音が真白の胸の奥にまで、強く響いた。
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