月刊傍流堂

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第3話 つきよよし

「真白さま。最近、お祈りが長くありませんか」

 一瞬、照葉が誰に話しかけているのか分からなくて、真白はまばたきを繰り返した。

「どうしました、真白さま?」

 ――真白。それは、自分にかけられたことばだった。

 斎宮に来て、三年。

 十三歳になった真白を今でもそう呼びかけるのは、照葉と乳母だけになってしまった。斎王、斎宮と呼ばれることがほとんどで、自分で自分の名を忘れてしまいそうになる。

「気になることが増えてしまって」

「お祈りは決められた刻限に、決められている長さだけでお願いします。苦情が入ります。それに、あんまり熱心だと、真白さまが疲れますよ」

 先例にないことを行うと、斎宮寮の役人が口うるさく文句を並べてくる。先日も注意されたばかりだった。代々の斎王たちと違うことをしてもらっては困るという。

「でも、届いているのかどうか、不安で」

 傷の残る額に、そっと手を当てる。

 ふだんは前髪で隠れているものの、そこには、都での儀式で刻まれた痕が残っていた。あれから薄くはなったが、消えてはいない。

 これがある限り、正しい斎王ではない気がする。『闕(か)けた斎王』と、ひそかにささやかれていることも知っている。

 斎王が、伊勢神宮の神事に関わるのは年に三回。斎宮と伊勢神宮とは五里(約15㎞)ほど離れている。

「六月と十二月の月次祭(つきなみさい)、九月の神嘗祭(かんなめさい)。たったの三回なんて」

 真白は指を三本、折って数えた。

 時間もやる気も持て余し、ため息をつく日々を送っている。

 琴の練習は怠らない。弾き続けると爪が割れてしまうので、適度に留める。

『古今集』の歌もほとんど覚えてしまった。

 手習い(習字)も欠かさないし、琴以外の楽器も学んでいる。

 ――祈りたい。もっと、届くように。

 世の乱れがおさまって、御霊も鎮まったら、早く都に帰れるのではないか。

 そんなことは起きるはずがないのに、真白は手を合わせて希(こいねが)った。

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