月刊傍流堂

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序章 私を、さがしてほしい

 今日の旅は、彼女の生きたしるしの入り口に立っただけ。

 まだまだ真白さまを追いかけたい。伊勢まで行ってみたくなったし、京に戻った真白さまがなにを選んだのか詳しく知りたい。

 ポケットの中に、真白さま人形を静かにしまった。何度もぎゅっと握り締めてしまったので少し汚れてしまったが、朝よりも軽いように感じる。

 帰りの竹林は、いつもまっすぐに佇む真白さまのように思えて親しみを覚えた。

「竹。たけ――『多気』」

 さわさわと、風が竹を鳴らす。どこからか響く、細い弦の音のように。

 竹林の行き道では、撮影に昂じてばかりいる集団に冷たい視線を送ってしまったが、帰り道は自分も写真を撮りたいと素直に感じられた。

 JR嵯峨野線で京都駅へ戻ると、すっかり夜。

 駅前に立つ塔が今夜だけは緑色にライトアップされていて、一本の竹のように映る。

 その、さらに上には、霞んだ月が浮かんでいた。


藤宮彩貴(ふじみやさき)

東京都杉並区生まれ。東京都立大学人文学部卒業。一般企業や都内の区立図書館での勤務などを経て、2020年第3回富士見ノベル大賞審査員特別賞受賞。翌年『焔の舞姫』にてデビュー。ほかに『平安後宮占菓抄』(ともにKADOKAWA富士見L文庫)がある。趣味は寺社仏閣巡り。好きなお寺は京都・南山城の浄瑠璃寺。ほぼ毎日、一万歩歩いて作品の構想を練る日々。

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